5月8日に米雇用統計が発表となりましたが、市場予想よりは悪化が緩やかであり、悲観的な見方が一服しています。
非農業部門雇用者数:-2050万人(予想:2200万人)
失業率:14.7%(予想:16.0%)
非農業部門雇用者数に関しては前回分が下方修正されていますし、そもそも2000万人を超えるなど、前代未聞の数値です。米経済がここからどの程度持ち直してくるかに注目が集まりそうです。
しかし、今回の統計で個人的に非常に懸念しているものがあります。それは平均時給です。
平均時給:+4.7%(予想:0.4%)
平均時給は基本的には上昇するのが望ましいとされています。賃金の上昇は個人消費に貢献するものと思われますし、それがGDPにも反映されていくでしょう。であれば、今回の平均時給の上昇はポジティブ要因と思われてもおかしくはありません。
しかし、今回の平均時給の上昇は全体の給料が増えたことによる上昇ではなく、いわゆる低所得者層の失業によるものであると考えられます。つまり、低所得者層が平均から外れることにより平均賃金が押し上げられたという結果となっているわけです。
米国では所得格差の拡大が問題になっていると言われていますが、今回のコロナショックで高所得者層よりも低所得者層がより打撃を受けているということが伺えます。今回のコロナショックからの経済危機はより格差を拡大させている可能性が高いと考えられます。
自由主義経済において、格差が生じるのはある程度は仕方のないことです。しかし、それが許容範囲を超えると問題が大きくなる可能性をはらんでいるのではないかと考えています。低所得者層の個人消費の減退や社会保障費の増大などが社会問題化する可能性も高まるでしょう。自殺やうつ病、犯罪なども増加する恐れがあります。そうなってくると、小さな政府では立ち行かなくなるのではないでしょうか。
そうなった場合、相場はどういった動きを見せるのでしょうか?コロナショックからの経済危機はこれまでにあまりなかった動きであり、ここからの対応は非常に重要となりそうです。