フェイスブックの仮想通貨(暗号資産)『リブラ』に対する警戒の目は日に日に強まっている感じを受けます。G7でも議題に上がっていますし、当局者からの懸念の声が上がっていることは事実でしょう。フェイスブックの子会社である『Calibra』のCEOであるデビット・マーカス氏は公聴会で色々と説明をしていますが、ここまでに伝え聞く限りでは疑問を抱いてしまうような発言もあり、今後の展開にははっきり言って多くを望めないのではないかと考えています。
「もし米国が行動できなかったら、我々と価値観が大きく異なる誰かによってコントロールされる仮想通貨(暗号資産)が生まれる可能性がある」という発言はその最たるものであり、自らの置かれている状況を理解しているのだろうか?と思える発言だったように感じます。私が見る限り、『リブラ』に対する懸念の大きな要因の一つとしてフェイスブックそのものに対する不信感があります。これまでもプライバシーの保護に関して問題を起こしてきた企業という認識がされており、それが問題となっているのです。にもかかわらず上記の発言です。当局関係者からすれば、フェイスブックにやらせるくらいなら別の企業のほうがましと考えている可能性もあるわけです。そこを理解しているかどうかは重要ではないかと考えています。
もちろん『リブラ』に関しては、既存の金融システムを揺るがす可能性を秘めているという認識があり、それに対する警戒感という側面もあるでしょう。特にドルは基軸通貨としての地位を脅かされる立場にあります。これは安易に認めることはできないということになるでしょう。ただ、現状においては上述したように表面上は『リブラ』の問題というよりもフェイスブックの問題が公聴会などでクローズアップされています。これは仮想通貨(暗号資産)にとってはあまり望ましい局面ではないと思われます。ただ、逆の見方をすれば発行主体に信頼がおけるのであれば仮想通貨(暗号資産)は急速に広がる可能性を秘めているということができるかもしれません。とはいえ、現状において信頼できる発行元となると中銀などになりそうで、積極的に動くかというと現段階においては難しいところではないでしょうか。さらに言えば、仮想通貨(暗号資産)の本来の理想は非中央集権であり、中銀の発行する仮想通貨(暗号資産)という中央集権的なシステムではこれまでと大差ないといった見方もできるでしょう。
すこし話が『リブラ』から逸れましたが、今後の『リブラ』に関しては私は悲観的にみています。少なくとも発行などに関してはそれなりの時間を要するのではないかといった見方をしています。フェイスブックそのものが疑われている状況下で『リブラ』の有用性をどれほど力説しても当局には響かないのではないかとみています。裏からのロビイングなどで劇的決着という可能性がないわけではありませんが、まだそういった段階にも至っていないとみています。